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日本と英国を行き来する2人のバイリンガルキッズの母。ロンドンで生まれた子供たちを連れて日本へ。横浜で英語で創作絵本を作るキッズ・クリエイティブ・ライティングの教室を開き、英語の絵本の出版。小学校で不登校になった息子を連れて、またまた英国へ。イギリスの自然と息子のテニス・トーナメントの応援と野菜作りを楽しむ日々を過ごしていましたが、社会人学生として大学に入学。

2015年5月15日金曜日

ipadは学校のステイタス  ディスレクシアの子供達

ipadでの学校教育 

「私のクラスの様子を見せてあげる。」と言って小学校の先生をしている姪っ子がipadを持って遊びにきました。 

彼女は小学校の最年少の学年(レセブション)で5歳児の担任をしています。 
「教室に常備している」というipadには子供達が撮った写真や作った画像がいっぱい。

 「子供達が勝手に使っているから何を撮っているかわからない。」といいながら見せてくれました。 確かに頭が途切れたり足の先しか撮れていない写真も多いですが、いろいろと面白く加工された写真や画像がいっぱいありました。 

「すごい。これ、本当に5歳の子供達が作ったの?」と私も家族もびっくり。 

「このipadは教室用で、休み時間に子供達が勝手に使うから私もどうやっているのかわからないわ。」と担任教師も感嘆した口調です。 

ipadを利用した授業風景 写真:ガーディアン紙
ipadでの授業カリキュラム Stephen Perce Foundation (写真:ガーディアン紙)
「5歳の子供達が勝手に使うのでは高い機械が壊れたりしないの?」と思わず心配してしまう大人ですが、 「このプラスチックのカバーがついているから投げて落としたって壊れたりしないわよ。」と先生は澄まし顔。 

イギリスの学校では、今ipad が学校に何台あるかがステイタス。 
息子の小学校でも『ipadを何台購入しました。』と学校通信に誇らしげに発表していました。姪っ子の小学校では1クラスにipad1台と教師が授業に利用する為の2台はあると話してくれました。 

10年前に娘が入学したロンドンの小学校も各教室にコンピューターが1台あって、子供達が休み時間に勝手に使っていたのを見て驚いた私。 

今はワイヤレス、タブレット、ipadやスマートフォンの時代。
クラスにipad 1台どころか生徒一人に1台を与える学校も増えています。


イギリスの学校では当たり前のITを利用した授業で、日本の学校で不登校生だった為学習が遅れていた息子もすごく助けられました。 

「日本の学校でもipadを授業中に使えたらいいね。」
息子の友達でディスレクシアのお友達のことを思います。

ipadを利用した授業が増えているイギリスの学校  写真:ipads in primary
写真:ipads in primaryブログサイトから( www.ipadsinprimary.co.uk)


 ディスレクシアとコンピューター 


中学校になってからディスレクシアであるとわかった息子の友達。  漢字の読み書きが苦手、でもがんばって勉強してきました。 

「漢字を勉強させても全然覚えられなくて困っちゃうんだよね。」とお父さん。
「漢字の勉強をするとすごくストレスがたまっちゃうみたい。」とお母さん。

ご両親の表現は控えめですが、鉛筆を持ったまま何時間も机の前でフリーズしていた不登校時代の息子の姿が思わず目に浮かびます。 

何度、同じ漢字を書かせても覚えることができないのはなぜ?

ディスレクシアの難しいところは「ちょっと勉強が苦手な子?」というくらいにしか思わず親も教師もはじめは学習障害と疑わないことです。

本人はすごく努力していても「勉強が足りない。」「努力が足りない。」と誤解されやすいこと。 

アメリカ人の俳優のヘンリー・ウィンクラー(Henry Winkler)は31歳まで自分がディスレクシアと知りませんでした。「自分は馬鹿なだけだと思っていた。学校でも周りからも馬鹿だといわれ続けたから。。。」 

彼はディスレクシアと判明してから初めて読書を楽しめるようになりました。いまではディスレクシアの少年を主人公にしたハンク・ジップザー(Hank Zipzer)の本のシリーズの作家としても活躍し、2011年には女王様から大英帝国勲章(OBE:Order of the British Empire)を受賞しました。ハンク・ジップザーはテレビシリーズにもなりイギリスの国営テレビ局BBCで2014年から放映されています。 

ディスレクシアのハンクジップザーのお話 イギリスの国営放送局 BBCにて放送 
子供番組 CBBC で放映中 ハンク•ジップザー

息子がイギリスの小学校で授業中コンピューターを利用して勉強を許可されていることを伝えたら「コンピューターを使うのは得意だから学校でもコンピューターを使えるといいのに。」とディスレクシアの勉強法を探して東大の科学先端技術センターのディスレクシアプログラムにたどり着いたご両親はつぶやきます。

PCやipad などITを授業や試験で利用できれば、ディスレクシアの子供達も勉強しても努力が実らないというむなしい空回りが減るのに。。。ヘンリー・ウィンクラーのようにできないと思っていた読書も楽しめたり、何よりも自分が馬鹿ではないという自信を持つことができるのに。。。

ちなみにipadを全校生徒に1台づつ配給する『1:1 ipadプログラム』をイギリスでいち早く導入した セダース校によるとipadを与えても生徒がすぐ壊すのではという質問に対して、その割合は年間2%だけだと答えています。

この学校ではipadを利用して生徒達は読書をしたり、文章を書いたり、ゲームをしたり、検索をしたりするだけでなく、マインドマップ、メイル、音楽の作成や演奏、アニメーションやコンピュータープログラムの制作などと多様に利用しています。子供達が勉強する為に、また創造力の表現のツールとしてipadは一番効果的と言うイギリスの学校。

子供達には様々な能力がある。学校で一つのことができないからと言ってすべてが否定されてしまわないように、いかに子供のもつ才能を引き出せるか鍵は今の子供達の生活の一部になってきているITツールを学校でどれだけ利用できるかということかもしれません。


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 ディスレクシアと日本語 
イギリスの学校教育 苦手なことより得意なこと コンピューターを利用した支援教育 
イギリスの小学校 特別教育支援(SEN)の指導法

記事中で紹介した本

  


参照



2015年5月5日火曜日

ディスレクシアと日本語

日本のディスレクシア


 息子が英国へ引っ越す時に、 息子と仲良くしてくれた近所の上級生のお父さんが 「引っ越しちゃうと漢字を読んでくる人がいなくなって困っちゃうね。」 とつぶやきました。

 なんのこと?と首をかしげる私。

 小学校1年から不登校生の息子でしたが、なぜか漢字を読むのだけは好きでした。  息子の興味のあることに気がついた校長先生は、校長室での個人授業でも漢字を取り上げてくれました。ひらがなを書くのも億劫な息子ですが、なぜか漢字を読むのは得意になりました。

 不登校生の息子に声をかけてくれて一緒によく遊んでいた上級生のお友達。誘われてはその子の家に行って、一緒にコンピューターゲームをした息子。

 漢字が苦手なその上級生はゲームをしている時漢字が出てくると息子に読んでもらっていたとその子のお父さんが教えてくてました。

 初めて知った事実。不登校生でまともに勉強できずに学力が遅れている息子。 
たった一つの得意なことがこんなところで活躍していたなんて。

 不登校生でも誰かの役に立つことができるんだ。 
心に奥がポッと暖かくなった一瞬でした。

 中学校に進学したこの上級生がディスレクシアだったと知ったのはその後でした。

 イギリスではよく聞く「ディスレクシア(dyslexia)」という言葉。 
日本で聞いたのは、この友達が初めてでした。
 日本語でもディスレクシアってあるんだぁ。

ディスレクシアは聞いた言葉の綴りを書くことができない学習障害。 
初めて耳にしたのはイギリスでした。

イギリスのディスレクシア支援体制


 電話先の仕事相手に「今の言葉のスペルを教えて。」と聞いた時。
「僕はディスレクシアだから教えられないんだよ。電話では自分の名前のスペルを教えることもできない。」と言われてびっくりしました。

電話先の相手はロンドンの有名芸術大学院を卒業した現代作家。一緒に仕事をしていても頭のいい彼の学力を一瞬も疑ったことはありませんでした。読書も好きな彼はいつも本を手に持っていました。

とっても難しい本を読んだり哲学的なことを考えたりできるのに、自分の名前も書くことができないなんて、そんなことがあるの? それがディスレクシアとの出会いでした。

彼の高校は有名人を卒業生に多く持つ私立学校。2012年のロンドンオリンピッックでは、金賞受賞者2名を含めた8名の受賞選手を出しました。「僕の通っていたミルフィールド(Millfield)はディスレクシアのサポートが充実しているんだよ。」

ディスレクシアの支援教育で有名な英国の私立の全寮制学校 Millfield School
Millfield School (photo:テレグラフ紙)


2012年のオリンピック受賞者を多く出したイギリスのミルフィード校はディスレクシアの支援教育でも有名です。
2012年のオリンピックでは卒業生が活躍 (photo:the Daily Mirror)


ディスレクシアのレベルは個人差がありますが、イギリスでは学校や大学あるいは多くの資格コースでもサポート体制があります。ディスレクシアだから進学できない、資格が取れないということはありません。

 義理の姉が二人目を産んだ後に何を思ったか法廷弁護士の資格BPTCを取る為に、大学院へ入学。ディスレクシアの受験生はコンピュータを利用して資格試験を受けれます。ディスレクシアと認められた彼女でも無事卒業試験にも合格。

「単語の綴りが書けないからといって、個人の学力や知能力に限りがあるのとは違う。
少しの支援があれば個人の可能な限りの能力が発揮できる。」
そして、「それを認めよう。」という考えでしょう。

英語のディスレクシアに日本語教育がいい。

 英語は発音と単語のスペルの関係が複雑です。26文字のアルファベットの組み合わせで40以上の発音があります。ディスレクシアは英語ならではの学習障害だと思っていました。文字の発音と字が一致する日本語ではディスレクシアはないと思っていた私。 

不登校生の息子が独力で辞書や図鑑を読み進めていけるのは、この日本語の特性のお陰と思っていました。

 でも、漢字があったのね。 

確かにひらがなやカタカナは発音通りの綴りですが、漢字はいくつも発音があるし、発音と綴りの関係が複雑です。漢字と英語の単語はそういう意味で似ているかな。

 漢字のディスレクシアで困っている日本のお友達。でも、アメリカやイギリスの学校では英語のディスレクシアの生徒に日本語や中国語を習わせると習得がよいという結果が出ています。英語だとスペルが書けないけど、日本語だと作文が書けるようになったというアメリカのディスレクシアの13歳。イギリスの学校ではディスレクシアの生徒の為に日本語の授業を行っています。

ディスレクシアの認知度


最近になってディスレクシア教育の体制が整ってきたイギリスですが、義理の母曰く娘がディスレクシアとは大学院へ行くまで知らなかった。
「そういえば昔から学校の宿題で同じ言葉を3回違うスペルで書いていたけど。。。ディスレクシアなんて言葉も知らなかった。」
 イギリスでもディスレクシアという言葉が普及していなかった時があったのですね。

 日本ではまだまだ聞き慣れないこの言葉。 ディスレクシアと判定されても通っていた中学校ではディスレクシアと認めてもらえかった息子のお友達。

漢字が読めないのにどうやって入試試験を受けれるのだろうか。学校で認知があれば入試の際のサポートもあるのに。。。不安を抱えながら通える高校を探すご両親。不登校生の息子にもあう学校があるのではとあちらこちらへと足を運んだ昔の自分と重なります。

 漢字は苦手でもひらがなやカタカナはすごい速さで読むことができます。
社交的でスポーツも得意なお友達。

中学校のスポーツ部でも活躍して、高校は得意なスポーツでの入学が決まりました。

彼の才能を見分けた中学校の先生が推薦してくれました。推薦試験に無事に合格。
高校入試時期を待たず一足先に進学先が決まりました。

ご両親も予想していなかった結果。
 得意なことがあれば必ず誰か見ていてくれるのね。

 高校入学おめでとう。

できないことより得意なことに目を向けて元気に歩いていければきっとどこかへつながるのね。


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関連する記事
英国の特別支援 イギリスの小学校

参照 Dyslexics excel at Japanese, The Guardian, 2006
Unlocking Dyslexia in Japanese, the Wall Street Journal, 2011
London 2012 Olympics: The private school that produced eight of the Olympians,The Telegraph,2012
The Amazing Wilson: Schools' Cup final blow drove Peter to Olympic glory, The Daily Mail, 2012